2016年2月18日木曜日

制作過程:アルゴリズム→かたち→ペイスティング

3月26日からタカシソメミヤギャラリーで始まる個展に出す作品の制作過程を一部ご紹介します。前回の記事で紹介したように、今回の展示ではプログラミングを使って「かたち」を作りだし、それを様々な表現方法によって作品にしています。とくにカッティングシート*の貼り合わせ(ペイスティング)作品では、アルゴリズム的な方法論でいかにして絵画的なものを作り出すことができるか、という問題意識のもとで制作に取り組んでいます。

*「カッティングシート」は中川ケミカルの製品名ですが、ものに貼る粘着シートの代名詞として一般化していますので、製品会社によらず粘着シートを「カッティングシート」と呼んでいます。


左の作品は最近作ったペイスティング作品です。この作品の制作プロセスは主に次の2つで成り立っています。


  1. Processingでプログラムを書き、パラメータを動かして「かたち」を決定して、pdfファイルを作る
  2. pdfデータの色や階層を調整し、カッティングシートを階層ごとに切り出し、支持体に貼り合わせる

1つ目のプロセスについては、前回の記事でも書きました。プログラミングを使ったアルゴリズム的制作法の特徴は、設計と取捨選択にあります。プログラムを設計し、そこから生成された大量の「かたち」の可能性の中からこれだと思うものを選ぶ、というところに創造性があります。前回の記事では建築デザインの事例に触れましたが、音楽制作でも松本昭彦氏によってアルゴリズム的方法論が実践されています(「アルゴリズム作曲法によるコンピューター生成音楽」)。

2つ目のプロセスでは、情報から物質への行程、いわゆるマテリアライジングを行っています。分かりやすくいうと、私のペイスティング作品は版画の一種です。版画では色別に版を作り、版ごとに色を重ね刷りして絵を作りますが、私の場合それをカッティングシートでやっています。具体的にいうと、点の距離やつながり、またはセル・オートマトンなどのアルゴリズムによって「かたち」を階層化し、階層ごとの色や階層順序をIllustratorで調整しています。それをプロッタと呼ばれるカッティングマシーンでシートを切り、カッターナイフでかたちを切り出して(実はこの手作業が大変です)、支持体に貼りあわせます。支持体は平滑で硬い物体ならおおよそ貼りつけ可能であり、上の作品ではアルミ板に貼り付けています。




 

最近は3Dプリンタやレーザーカッターなど様々なマテリアライジング技術がありますが、カッティングシートとプロッタでの表現が優れているのはそのクオリティとコストです。私は3Mのカッティングシートを使っていますが、これは色数が多く発色に優れ、耐久性も高いため(屋外雨ざらしでも数年耐えるように作られています)、アート作品としての質を保てます。さらに層の厚みがあるため、重ね貼りをすると版画では得られない独特のマチエールを持ち、印刷やペインティングでは使いづらい支持体も使うことができます。また3Dプリンタでギャラリー展示サイズのものを作るとしたら相当なお金がかかりますが、カッティングシートだと個人制作可能なレベルまで予算を抑えることができます。

ハヤマトモエ個展 『絵画の設計』
2016年3月26日(土)~4月30日(土)
Takashi Somemiya Gallery
〒112-0014 東京都文京区関口1-24-8
TEL 03-3267-0337
営業時間/13:00~19:00
定休日/日、月、祝日
最寄り駅/東京メトロ 有楽町線 江戸川橋駅 (1a出口) 徒歩5分
東京メトロ 東西線 早稲田駅 徒歩13分